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建てられないのに支払い義務あり?不動産売買の判例

〈 家・土地についてのノウハウ 〉

藤原 栞里

筆者 藤原 栞里

【ポジティブが取り柄の総務担当】
不動産知識ゼロからスタートし、「自分が疑問に思ったことをそのまま記事にする」スタンスで毎日ブログを執筆中‼︎難しい売却の話も、同じ目線でわかりやすくお伝えします。

建築基準法43条の許可が得られなかった場合の売買トラブル
東京地裁令和5年6月1日判決をわかりやすく整理


【はじめに】


不動産の売買では、
「この土地には家が建つのか」という点がとても大事ですよね。

特に建売用地や再建築前提の土地であれば、
買主としては「建てられること」がほとんど大前提
になっていることも多いと思います。

この判例は簡単にいうと、

家を建てるつもりで土地を買った業者が、
あとで建築基準法43条の許可が取れないと分かり残代金の支払いをやめたが、
裁判所はそれを認めず、売主の違約金請求を認めた

という事案です。

RETIOの掲載内容では、
売買代金は1,400万円、違約金は20%の280万円で、
売主が買主業者に違約金請求をした事案
として紹介されています。

最初にこの話を聞くと、
「建てられないなら買主が払わなくていいのでは?」
と思いやすいです。

でも裁判所の考え方は違いました。

この判例で大事なのは、
建てられなかったことそのものよりも、
建てられないリスクがあることを
わかったうえで契約していたかどうかです。





事案の内容



この事案では、
売主である個人が、買主である不動産業者に
土地を売る契約を結びました。

契約は令和4年2月6日に締結され、
売買代金は1,400万円、そのうち手付金が50万円、
残代金1,350万円の支払期日は令和4年4月8日とされていました。

そして、
契約には**違約金280万円、つまり売買代金の20%**
という条項が入っていました。

両者は土地の売買契約を結び、
買主は手付金を支払っていましたが、
残代金の支払日前になって
「この土地では建築基準法43条の許可が取れず、予定していた建物が建てられない」として、
支払いを拒みました

すると売主は、
買主の債務不履行だとして契約を解除し、
違約金を請求しました。

この土地は、
普通の意味で道路にきちんと接している土地ではなく、
建築するには43条許可が必要な土地でした。

しかも
重要事項説明書や販売チラシには、

・建築基準法42条の道路ではないこと
・原則として建築不可であること
・再建築には43条許可が必要なこと

が書かれていました。

つまり、
最初から「普通に家が建てられる土地」として
売られていたわけではありませんでした。

むしろ建築には43条許可が必要で、
しかも原則は建築不可という前提が
最初から示されていたのです。



買主は何を理由に支払いを拒んだのか



買主の立場からすると、
「建物を建てるために買うのに、建てられないなら意味がない」
という感覚だったはずです。

実際、
買主は契約後に行政へ事前相談を出し、
その結果予定していた木造3階建ての建物については
許可が取れないことがわかりました。

れを理由に、
買主は「もう契約は白紙にすべきだ」と考え、
残代金の支払いを拒みました。

感覚的にはわかります。

ただ、裁判所は

「建てられないことがわかった」ことと、
「だから代金を払わなくてよい」ことは同じではない

と考えました。

裁判所は、
問題となっているのが
「建築できるかどうか」ではなく、
買主が代金支払義務を履行しなかったことについて、
責めに帰することができない事由があるか

だと整理しています。

まり、
土地に建築上の問題があったかどうかと、
買主が残代金を払わなかったことの免責が認められるかどうかは、
同じ話ではないという見方です。



裁判所はなぜ売主の請求を認めたのか



結論からいうと、
裁判所は次のように見ました。


最初からリスクは見えていた

この土地は、
最初から

・原則建築不可
・43条許可が必要

という説明がされていました。

つまり、
買主は「建築できるかどうか未確定な土地」を買うことを
理解できる立場にありました。


② 買主は不動産業者だった

今回の買主は一般の個人ではなく、
不動産業者でした。

裁判所は、
業者であればこうした土地のリスクを読む力があり、
必要なら契約で自分を守る条項を入れるべきだった
と見ています。


契約で逃げ道を作っていなかった

ここがいちばん大きいです。

買主は、
「43条許可が取れなければ白紙解除できる」
といった特約を入れていませんでした。

裁判所は、
そういう特約を入れずに契約した以上、
あとで建築できないと分かっても、
当然に支払いを拒めるわけではないと判断しました。

RETIOでも、
この事案は建築不可の場合に備えて
白紙解約特約を入れておくべきだったと整理されています。

この判例を一言でいうと

「建築できなかったから買主が負けた」のではなく、
「建築できないかもしれない土地だとわかっていたのに、
そのリスクを契約で処理しないまま買ったから買主が負けた」

という話です。

つまり裁判所は、
「43条許可が必要な土地は全部買主が不利になる」
と言っているわけではありません。

そうではなく、

“リスクがある土地なら
事前に調査し、契約書で処理、
ダメなら解除できるようにしておくべきだった”

と言っているわけです。




実務で学ぶべきポイント



この判例から学ぶべきことは、
かなりはっきりしています。

⚪️ 建築条件が不安定な土地は、そのまま買わない

⚪️ 43条許可が必要な土地、接道に不安がある土地、建築可否が未確定な土地は、
「たぶん建つだろう」で契約しない

これが基本です。



必ず特約で逃げ道を作る



この事案でいちばん実務的に重いのは、
やはり特約がなかったことです。

裁判所は、
買主が専門家である以上、
建物が建築できない場合には解約を可能とする特約を追加することもできたのに、
それを求めなかったことを明確に指摘しています。

たとえば、

・43条許可取得を停止条件にする
・一定期限までに建築可能であることが確認できなければ解除できるようにする
・建築確認取得不能の場合は白紙解約にする

といった特約です。



重要事項説明書の記載を軽く見ない



今回の事案では、
重要事項説明書やチラシに、
建築不可リスクがちゃんと書かれていました。

裁判では、
こういう記載がかなり重く見られます。

「説明は受けていた」「文書にも書いてあった」となると、
あとで知らなかったとは言いにくいです。


【まとめ】


この判例をできるだけシンプルにまとめると、
こうです。

・買主は業者だった
・土地は最初から43条許可が必要な土地だった
・原則建築不可であることは説明書にも書かれていた
・それでも買主は契約した
・しかし契約後に建築できないとわかって支払いを拒んだ
・裁判所は「それではダメ」と判断した
・理由は、リスクが見えていたのに、そのリスクに備えた特約を入れていなかったから

つまり、
この判例の教訓はとても現実的です。

不確実な土地を買うなら、
不確実なまま契約してはいけない。

これに尽きます。



 

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