
不動産売買契約書とは?初心者でもわかる内容と確認ポイント
【 はじめに 】
不動産を売ったり買ったりするときに出てくる書類の中でも、特に重要なのが「不動産売買契約書」です。
でも、いざ契約書を見ると、
「文字が多くて難しそう」
「専門用語ばかりで読む気がなくなる」
「重要事項説明書と何が違うの?」
「結局、どこを確認すればいいの?」
と感じる方も多いのではないでしょうか。
不動産は、数千万円という大きな金額が動くことも珍しくありません。
だからこそ、
「たぶんこういう意味だろう」で進めるのではなく、
契約前に一つずつ内容を確認しておくことが大切です。
特に中古住宅や土地の売買では、物件ごとに条件が違うため、
最後に記載される特約事項がとても重要になることもあります。

1.不動産売買契約書とは?
不動産売買契約書とは、
売主と買主の間で成立した不動産売買の内容を書面にしたものです。
例えば、
「この土地・建物を」
「この価格で」
「この日に引き渡します」
「手付金はいくらです」
「残代金はこの日に支払います」
といった内容を記載します。
不動産取引では条件が複雑になることが多いため、
口約束だけで進めると、トラブルにつながる可能性があります。
そのため契約条件を書面にして、売主・買主双方が確認します。
宅地建物取引業者が関与する取引では、
契約成立後、宅地建物取引業法第37条に基づく一定事項を記載した書面を交付する必要があります。
実務では、不動産売買契約書がこの「37条書面」を兼ねていることが一般的です。
2.重要事項説明書とは何が違う?
不動産売買では、
重要事項説明書と売買契約書の2種類の書類が出てきます。
最初は違いが分かりにくいですよね。
簡単にいうと、
◯重要事項説明書=物件や取引条件について契約前に説明する書類
◯売買契約書=売主と買主が合意した契約内容をまとめた書類
です。
重要事項説明書では、
・登記された権利関係
・法令上の制限
・道路
・インフラ
・管理関係
・契約解除に関する事項
など、その物件を購入する判断に必要な重要情報を説明します。
宅地建物取引業者が媒介等を行う場合、宅地建物取引士が契約成立前に重要事項を説明します。
国土交通省も、宅建業法第35条に基づく重要事項として都市計画法や建築基準法など各法令による制限を整理しています。
つまり、
説明を受ける → 内容を理解する → 契約する という流れですね。
3.売買の対象となる不動産を確認する
契約書の最初に確認したいのが、売買対象物件の表示です。
例えば土地なら、
・所在地
・地番
・地目
・地積
建物なら、
・所在地
・家屋番号
・種類
・構造
・床面積
などが記載されます。
これらは登記事項証明書の内容をもとに記載されることが一般的です。
「住所が合っているから大丈夫」と思いがちですが、
土地には住居表示とは別に地番があります。
土地が複数筆に分かれている場合もありますので、
売買対象に必要な土地がすべて含まれているかを確認することが大切です。
4.売買代金と支払方法を確認する
当然ですが、売買価格は最重要項目です。
契約書には、
・売買代金
・手付金
・中間金
・残代金
などが記載されます。
例えば、
・売買価格3,000万円
・契約時手付金100万円
・決済時残代金2,900万円
というような形です。
さらに、
いつ、どの方法で、誰に支払うのかも確認します。
5.「手付金」とは?
売買契約時によく出てくるのが手付金です。
手付金は売買代金の一部に充当されることが一般的ですが、契約上は重要な意味を持ちます。
一般的な不動産売買では、手付金に解約手付としての性質を持たせます。
簡単にいうと、一定の条件のもと、
・買主は支払った手付金を放棄して解除
・売主は受け取った手付金の倍額を返して解除
できるという仕組みです。
ただし、いつまでも自由に解除できるわけではありません。
相手方が契約の履行に着手した後などは、原則として手付解除ができなくなる場合があります。
契約書に、
手付解除期日が定められている場合もありますので確認しましょう。
6.引渡し日と所有権移転日は重要
不動産売買では、
契約日=引渡し日ではないケースが多いです。
例えば、
・9月1日に契約
・10月31日に残代金決済・引渡し
というように、契約から引渡しまで期間があります。
その間に、
・住宅ローン手続き
・抵当権抹消準備
・引越し
・境界確認
などを進めます。
契約書では、
・所有権がいつ移転するのか
・鍵をいつ渡すのか
・残代金をいつ支払うのか
を明確にします。
売主が居住中の場合は、
「決済したのにまだ売主が住んでいる」という事態にならないよう、
引渡し条件をきちんと確認する必要があります。
7.固定資産税などの精算方法も決める
固定資産税・都市計画税は、原則として毎年1月1日時点の所有者に課税されます。
ただし不動産売買では、売主と買主の公平を図るため、
引渡し日を基準に日割り精算することが一般的です。
例えば、
・引渡し前までを売主負担
・引渡し日以降を買主負担
として計算します。
契約書で、起算日と精算方法を確認しておくことが大切です。
8.境界や面積についても契約条件になる
土地売買では、境界が非常に重要です。
例えば、
・確定測量をして引き渡す
・既存の境界標を現地で確認する
・境界非明示で売却する
など、取引によって条件が異なります。
また土地面積についても、
登記簿面積で売買する「公簿売買」と、
実際に測量した面積で代金を精算する「実測売買」があります。
例えば登記簿では100㎡でも、測量すると102㎡だったということがあります。
この2㎡について代金を精算するのかしないのかを契約書で決めます。
土地売買では、
面積・境界・測量をセットで確認した方が分かりやすいです。
9.住宅ローン特約とは?
買主が住宅ローンを利用する場合には、
よく融資利用の特約、いわゆる住宅ローン特約が入ります。
これは、
「金融機関から予定していた住宅ローンの承認を受けられなかった場合、
一定条件のもとで契約を解除できる」というものです。
通常は、
・借入予定額
・金融機関
・ローン承認期限
・解除期限
などを定めます。
この特約がない状態でローンが通らなかった場合、
「お金が借りられないので契約をやめます」と簡単に解除できるとは限りません。
買主にとって非常に重要な特約です。

10.契約違反をした場合はどうなる?
契約を締結した以上、売主・買主はそれぞれ契約上の義務を負います。
例えば、
・売主が引渡しをしない
・買主が残代金を支払わない
といった場合です。
契約書には、
・催告
・契約解除
・違約金
などについて定めるのが一般的です。
よくある契約書では、
売買代金の10%や20%相当額などを違約金として定めることがあります。
ただし実際の割合や適用条件は契約によって異なります。
契約前に、
「違反したらいくら払うのか」だけでなく、
どんな場合に契約違反になるのかまで確認しておくことが大切です。
11.契約不適合責任とは?
中古住宅の売買で特に重要なのが契約不適合責任です。
これは簡単にいうと、
引き渡された不動産が、契約で約束した内容に適合していなかった場合の売主の責任です。
例えば、
・契約上雨漏りがない前提だったのに重大な雨漏りがあった
・契約内容と異なる設備状態だった
などです。
買主は一定の場合、
・修補などの追完請求
・代金減額
・損害賠償
・契約解除
などを検討できることがあります。
ただし、契約不適合責任の範囲や通知期間については、
売主が個人なのか宅建業者なのかなどによっても扱いが異なります。
12.個人売主なら契約不適合責任を免責にできる?
個人が中古住宅を売却する場合、
契約不適合責任を負わないという特約を設けることがあります。
ただし何でも免責できるわけではありません。
例えば売主が不具合を知っていたにもかかわらず買主に告げなかった場合などは、
免責特約があっても責任が問題になる可能性があります。
一方、
売主が宅地建物取引業者で、買主が一般消費者の場合には、宅建業法による制限があります。
宅建業者が自ら売主となる場合、
契約不適合責任について買主に著しく不利な特約を自由に設定できるわけではありません。
そのため、
売主が誰なのかは契約内容を見るうえで非常に重要です。
13.物件状況確認書・告知書も重要
中古住宅では、売買契約書とあわせて、
物件状況確認書や告知書などを作成する場合があります。
これは、
・雨漏りの有無
・シロアリ被害
・給排水管故障
・増改築
・越境
・近隣との申し合わせ
など、売主が把握している物件状況を買主へ伝えるものです。
特に中古住宅では、売主しか知らない過去の情報があります。
「昔雨漏りしたけれど修理済み」という情報も、買主にとっては重要です。
14.既存住宅では建物状態について確認した事項も関係する
中古住宅では、
建物の状態について売主・買主双方が確認した事項が重要になります。
宅建業法上も、既存住宅の取引では、
構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項を37条書面に記載する仕組みがあります。
背景には、
・雨漏り
・シロアリ被害
・構造部分の不具合
などが契約後に発覚し、トラブルになるケースがあるためです。
必要に応じて建物状況調査、いわゆるインスペクションを利用する方法もあります。
15.「特約事項」
売買契約書の中でも、実務上特に重要なのが特約事項です。
標準的な契約条項だけでは、その物件固有の事情をすべて反映できません。
例えば、
・古家付き土地として売却
・境界確定を行わない
・残置物をそのまま引き渡す
・家具をサービス品として残す
・井戸がある
・擁壁がある
・越境物がある
といった事情です。
そこで特約として、
「本物件に残置するエアコンはサービス品とし、売主は性能について責任を負わない」など、個別条件を記載します。
つまり特約は、
その物件だけのルールと考えると分かりやすいです。
16.電子契約もできる?
現在では、不動産取引の書面について電子化が認められています。
2022年5月の宅建業法改正により、
重要事項説明書や契約成立後の37条書面などについて、
相手方の承諾を得たうえで電子書面として交付することが可能になりました。
電子契約を利用すると、
・スマートフォンやパソコンで確認しやすい
・書類保管がしやすい
などのメリットがあります。
電子契約の場合には紙の契約書に課される印紙税がかからないこともメリットです。
ただし、電子化するかどうかは取引方法や当事者の希望によります。
17.契約後に「やっぱりやめたい」はできる?
これは非常に多い疑問です。
基本的に、売買契約は成立すれば法的な拘束力があります。
そのため、
「気が変わった」だけで自由に取り消せるものではありません。
ただし、
・手付解除
・住宅ローン特約
・契約違反による解除
など、契約で定められた解除方法があります。
また一定の宅建業者売主の取引では、
場所や勧誘方法などの条件を満たせばクーリング・オフ制度が適用される場合もあります。
ただし、不動産契約なら何でもクーリング・オフできるわけではありません。
契約解除については、契約書の条件を確認することが重要です。
18.契約書でよくあるトラブル
不動産売買で後から問題になりやすいのは、
・境界
・設備故障
・雨漏り
・残置物
・引渡し時期
・契約解除
・住宅ローン
・契約不適合責任
などです。
例えば、
「エアコンを置いていくと思っていた」
「売主が撤去すると思っていた」
という小さな認識違いでも、引渡し直前に問題になることがあります。
だからこそ契約前に、
曖昧なことをできるだけなくしておくことが大切です‼︎
19.不動産売買契約書で特に確認したいポイント
契約前には、少なくとも次の内容を確認しておくと安心です。
・売買対象不動産
・売買代金
・手付金
・残代金支払日
・所有権移転日
・引渡し日
・固定資産税等の精算
・境界、測量
・所有権以外の権利の抹消
・手付解除
・契約違反・違約金
・住宅ローン特約
・契約不適合責任
・設備の引渡し条件
・特約事項
すべてを暗記する必要はありません。
大切なのは、
「自分が理解できていない部分を残したまま契約しないこと」です。

20.売主側が特に確認したいところ
売主側では、
・いつまでに引っ越すのか
・住宅ローンを完済できるか
・抵当権を抹消できるか
・境界確認をどこまで行うか
・設備をどこまで残すか
・契約不適合責任をどこまで負うか
などが重要です。
特に売却代金で住宅ローンを完済する場合は、
・残債
・抹消費用
・仲介手数料
なども確認しておく必要があります。
「売買価格=手元に残る金額」ではありません。
21.買主側が特に確認したいところ
買主の場合は、
・住宅ローン特約
・引渡し時期
・設備状態
・契約不適合責任
・境界
・建築・利用上の制限
などを確認します。
中古住宅であれば、
・リフォーム費用がどれくらい必要か
・給湯器などが使用できるか
なども重要です。
契約後に、
「こんな条件だと思っていなかった」とならないよう、
購入判断に関わる事項は契約前に確認しましょう。
【 まとめ 】
不動産売買契約書は、
単に「この物件を売ります・買います」というだけの書類ではありません。
売主と買主がどのような条件で取引するのかを細かく決める重要な書類です。
また、不動産は物件ごとに状況が異なるため、契約書の最後に記載される特約事項もとても重要です。
境界の扱いや残置物、設備、建物の不具合など、
その物件特有の条件が記載されていることがあります。
契約前には特に、
「聞いていた条件と契約書の内容が一致しているか」を確認することが大切です。
売買価格だけを見て安心するのではなく、
「いつ引き渡すのか」
「契約を解除するとどうなるのか」
「住宅ローンが通らなかった場合はどうなるのか」
「引渡し後に不具合が見つかった場合は誰が対応するのか」
といった部分まで確認しておきましょう。
不動産売買は大きな金額が動く取引です。
専門用語が多く、初めて見る契約書では分かりにくい部分があるのも当然です。
大切なのは、分からない内容を分からないままにしないことです。
少しでも疑問に思う条項や特約があれば、
署名・押印する前に不動産会社や宅地建物取引士へ確認しましょう。
契約内容をきちんと理解してから進めることが、
売主・買主双方にとって安心できる不動産取引につながります。
