中古マンション入居6日後に排水管が故障|売主の契約不適合責任が認められた判例の画像

中古マンション入居6日後に排水管が故障|売主の契約不適合責任が認められた判例

〈 不動産のノウハウ 〉

藤原 栞里

筆者 藤原 栞里

【ポジティブが取り柄の総務担当】
不動産知識ゼロからスタートし、「自分が疑問に思ったことをそのまま記事にする」スタンスで毎日ブログを執筆中‼︎難しい売却の話も、同じ目線でわかりやすくお伝えします。




【 はじめに 】




中古マンションを購入し、リフォームも終えて、
いよいよ新生活を始めた直後にトイレの水が逆流したら、とても驚きますよね。

引渡し時に目立った異常がなくても、
排水管の内部で劣化や詰まりがすでに進んでいた場合には、売主の契約不適合責任が認められることがあります。

今回ご紹介するのは、中古マンションへ入居してわずか6日後に、トイレの排水管の詰まりと逆流が発生した事例です。

買主は売主へ排水管の交換を求めましたが、売主が工事を行わなかったため、
自ら修理を手配し、工事費や仮住まい費用などを請求しました。

裁判所は、この排水管の不具合を契約不適合と認め、売主の責任を一部認めています。

この記事では、なぜ引渡し後に発生した不具合でも売主の責任になったのか、
契約不適合責任の考え方、中古マンションを売買するときの注意点について、
できるだけ分かりやすく解説します。





1.今回の裁判はどのような事例だった?



今回の事例は、
東京地方裁判所令和6年1月25日判決として紹介されている中古マンション売買をめぐる裁判です。

買主Xは、令和3年12月、売主Yから中古マンションの一室を6,380万円で購入しました。

その月のうちに、代金の支払い、所有権移転登記、物件の引渡しまで完了しています。

買主Xは、翌年1月に室内のリフォーム工事を行い、2月に家族と一緒に入居しました。

ところが、入居からわずか6日後、トイレの水が詰まり、逆流する不具合が発生します。

引渡しを受けた時点では、トイレの水洗機能に明らかな異常は確認されていませんでした。

それにもかかわらず、実際に生活を始めてすぐに、通常の使用ができない状態になってしまったのです。





2.調査によって排水管の交換が必要と判明



買主Xは、不具合が起きた排水管について、修理業者へ調査を依頼しました。

調査の結果、単に一時的にトイレットペーパーなどが詰まったのではなく、
排水管自体を交換する必要があると判断されました。

資料では、排水管内部に鉄さびなどが生じ、管の内部が狭くなっていたことが問題になっています。

このような状態では、
高圧洗浄によって一時的に水が流れるようになっても、再び詰まりや逆流が発生する可能性があります。

つまり今回の不具合は、日常的な使用方法や一時的な詰まりだけが原因ではなく、
長期間かけて進んだ排水管の劣化が関係していたと考えられました。

買主Xは売主Yに対し、期限を定めて排水管の交換工事を行うよう求めました。

しかし、売主Yは工事を行いませんでした。

そのため、買主Xは自ら工事を手配し、
工事費用や不具合によって発生した損害について、売主Yへ賠償を求めて裁判を起こしました。




3.売主はなぜ責任を否定したの?



売主Yは、主に次のような理由から、契約不適合責任は成立しないと主張しました。

まず、物件の引渡し時にはトイレの水洗機能に異常がなかったという点です。

引渡し前に水が流れ、通常どおり使用できていたのであれば、
契約内容に合った状態で物件を渡したと考えることもできます。

また、本件マンションの管理組合が、
高圧洗浄費用や内視鏡による調査費用を負担するとしていたため、
買主Xが早い段階で高圧洗浄を実施すべきだったとも主張しました。

売主側からすると、

「引渡し時には使えていた」
「まず高圧洗浄を行えば改善できた」
「管理組合が対応する問題である」

という考えだったのだと思います。

しかし、
裁判所は、引渡し時に一時的に水が流れていたという事実だけで、
契約不適合がなかったとは判断しませんでした。




4.契約不適合責任とは?



契約不適合責任とは、
売主が買主へ引き渡した土地や建物が、種類、品質、数量などについて、
売買契約で予定されていた内容に合っていない場合に負う責任です。

以前は「瑕疵担保責任」という言葉が使われていましたが、
2020年4月施行の改正民法によって、契約内容に適合しているかどうかを基準に判断する仕組みへ変わりました。

民法では、引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合、
買主は売主に対し、修補などによる履行の追完を請求できるとされています。

具体的には、買主は状況に応じて、次のような請求を行える可能性があります。

・不具合の修理や交換を求める
・代金の減額を求める
・損害賠償を求める
・重大な場合は契約を解除する

ただし、どの請求が認められるかは、
不具合の程度、契約書の内容、売主への通知時期、売主が修理を拒否したかなどによって変わります。

今回の事例では、買主がまず売主へ排水管の交換を求め、
それでも売主が工事を行わなかったため、買主自身が工事を行ったうえで損害賠償を求めています。




5.なぜ引渡し後の故障が売主の責任になったの?



この裁判の重要な点は、
不具合が表面化したのが引渡し後であっても、
その原因となる状態が引渡し時に存在していたと判断されたことです。

トイレの詰まりと逆流が発生したのは、入居からわずか6日後でした。

排水管の内部に生じたさびや閉塞は、通常、数日間で突然発生するものではありません。

そのため、裁判所は、
引渡し時点ですでに排水管の内部に劣化や詰まりにつながる状態が存在していたと考えました。


つまり、引渡し時の確認で水が流れたとしても、
そのことだけで排水管が正常な品質を備えていたとは限らないということです。

中古住宅では、設備や配管が完全に新品であることまでは求められません。

しかし、居住用マンションとして通常使用するために必要な排水機能を備えていなければ、
築年数が経過した物件であっても、契約内容に適合していないと判断される可能性があります。




6.高圧洗浄をすれば売主は責任を免れたの?



売主Yは、買主が早期に高圧洗浄を行うべきだったと主張しました。

しかし、本件では修理業者の調査により、
単なる高圧洗浄だけではなく、排水管の交換が必要だと判断されています。

高圧洗浄は、管の内部に付着した汚れや軽い詰まりを除去する方法です。

一方で、排水管そのものが著しく腐食し、内部が狭くなっている場合は、
洗浄だけでは根本的な解決にならないことがあります。

一時的に水が流れるようになっても、再び詰まりが起きる可能性があるからです。

今回の判例から分かるのは、
実際の不具合の原因と必要な工事内容を確認することが重要だという点です。

専門業者の調査で配管交換が必要と判断されているのに、
洗浄だけを求めて修理を拒否すると、売主の責任が認められる可能性があります。




7.売主の契約不適合責任が認められた理由



裁判所は、主に次の事情を踏まえて、排水管の故障が契約不適合に当たると判断したと考えられます。


入居からわずか6日後に不具合が発生した

引渡しから長期間が経過してからではなく、実際に生活を始めてすぐに発生しています。

買主の使用方法だけが原因とは考えにくく、
引渡し時点ですでに問題が存在していた可能性が高い状況です。


排水管内部の劣化が確認された

修理業者の調査により、排水管の内部にさびや閉塞があり、管の交換が必要とされました。

単なる一時的な詰まりではありませんでした。


トイレを通常使用できない状態だった

トイレの水が詰まり、逆流する状態では、居住用マンションとして通常の生活を送ることが困難です。

排水設備は住宅の基本的な機能の一つです。


買主が売主へ修理を求めた

買主Xは、いきなり自分で工事を行ったのではなく、まず売主Yへ排水管の交換を求めています。

それでも売主が工事を行わなかったため、買主が自ら修理したという流れです。




8.どのような損害が認められたの?



この裁判では、排水管の工事費用だけでなく、
仮住まいとして利用したホテルの宿泊費や慰謝料などについても、一定の範囲で認められました。

トイレが正常に使えず、排水の逆流が発生する住宅では、
衛生面や生活面から、そのまま住み続けることが難しくなる場合があります。

そのため、修理が完了するまでホテルなどへ避難した費用についても、
不具合と相当な関係がある損害として認められる可能性があります。

ただし、
買主が請求した費用のすべてが当然に認められるわけではありません。

裁判では、

・工事が本当に必要だったか
・工事費が適正な金額か
・ホテルへの避難が必要だったか
・宿泊期間が妥当か
・不具合と損害に関係があるか

といった点が個別に判断されます。




9.通知期間が過ぎると請求できなくなる?



契約不適合責任では、不具合を見つけた後、売主へ速やかに通知することが重要です。

種類または品質に関する契約不適合について、
買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、
原則として追完請求、代金減額、損害賠償、解除ができなくなると定められています。

ただし、不動産売買契約では、
民法の期間とは別に、契約書で売主の責任期間を定めることがあります。

例えば、

・引渡しから3か月
・引渡しから6か月
・引渡しから2年間
・設備については7日間

など、契約内容によって異なります。

今回の資料でも、売主側は期間に関する主張をしていましたが、
買主が期間内に排水管の工事を求める通知をしていたことなどから、売主の責任が否定されませんでした。

不具合を発見した場合は、「少し様子を見よう」と放置せず、
メールや書面など記録に残る方法で売主や仲介会社へ連絡することが大切です。




10.中古マンションの排水管は誰が修理するの?



マンションの排水管では、
専有部分なのか共用部分なのかが問題になることがあります。

専有部分とは、一般的に各住戸の所有者が単独で所有・管理する部分です。

共用部分とは、建物全体や複数の住戸で共同使用する部分で、管理組合が管理します。

排水管については、

・住戸内だけで使用する枝管
・床下を通る配管
・複数住戸が使用する縦管
・建物全体につながる排水設備

などがあり、どこまでが専有部分かは、
配管の位置や構造・管理規約によって異なります。

今回の事例では
管理組合が高圧洗浄や内視鏡調査の費用を負担する話もありましたが、
それだけで売主の契約不適合責任がなくなるとは判断されませんでした。

管理組合が一定の作業を行うことと、
売主が契約内容に適合した物件を引き渡す責任は、別の問題として考える必要があります。

購入前には、
管理規約、使用細則、長期修繕計画、修繕履歴などを確認し、
排水管が専有部分か共用部分かを把握しておくことが大切です。




11.中古マンションの買主が注意すべきポイント



引渡し前に水回りを確認する

トイレ、キッチン、浴室、洗面台の水を実際に流し、
排水の遅れ、異音、悪臭、逆流がないか確認しましょう。

ただし、短時間の確認だけでは、配管内部の劣化まで発見できない場合があります。


リフォーム前に配管の状態を確認する

中古マンションを購入して大規模なリフォームを行う場合は、
内装をきれいにするだけでなく、給排水管の状態も確認しましょう。

床や壁を解体する工事がある場合は、配管の交換時期を検討しやすくなります。


物件状況確認書を確認する

過去の漏水、排水不良、配管交換、修理履歴などが記載されていないか確認します。

売主が把握している不具合は、具体的に説明してもらうことが重要です。


不具合発生後は記録を残す

写真や動画、業者の調査報告書、見積書、売主とのやり取りを保存します。

売主へ修理を求めた日や回答内容も、後の話し合いで重要になります。





12.中古マンションの売主が注意すべきポイント



売主側は、「自分が住んでいたときは問題がなかった」という理由だけで、
責任がないと判断しないことが大切です。

買主への引渡し直後に不具合が起きた場合、
売主が認識していなかったとしても、契約不適合責任が問題になることがあります。

売却前には、次のような情報を整理しておきましょう。

・過去にトイレや排水口が詰まったことがあるか
・高圧洗浄や配管工事を行ったことがあるか
・管理会社や管理組合から配管について説明を受けていないか
・同じマンションで排水トラブルが発生していないか
・リフォーム時に配管の劣化を指摘されていないか

把握している事実は、仲介会社へ正確に伝え、物件状況確認書などへ記載することが大切です。

また、買主から不具合の連絡を受けた場合は、
最初から責任を否定するのではなく、現地確認や専門業者による調査を行いましょう。

必要な修理を早い段階で行えば、ホテル代や慰謝料など、損害が拡大することを防げる場合があります。




13.この判例から分かる重要なポイント



今回の裁判例から学べるポイントは、次のとおりです。

① 引渡し時に設備が一応使えていたとしても、
内部に重大な劣化があれば契約不適合になる可能性があります。

② 入居直後に不具合が発生した場合は、
引渡し前から原因が存在していたと判断されやすくなることがあります。 

③ 高圧洗浄などの一時的な対応で改善する可能性があっても、
専門業者が配管交換を必要と判断していれば、根本的な修理が必要です。

④ 管理組合が費用を負担する作業があったとしても、
売主の契約不適合責任が当然になくなるわけではありません。

⑤ 買主は売主へ修理を求めたこと、不具合の内容、工事費、仮住まい費用などの記録を残すことが重要です。



【 まとめ 】



今回の裁判では、中古マンションへの入居から6日後にトイレの詰まりと逆流が発生し、
排水管の不具合が契約不適合にあたると判断されました。

引渡し時に問題なく使えていても、
内部の劣化がすでに進んでいた場合は、売主の責任になることがあります。

中古マンションを購入するときは、
室内の見た目だけでなく、給排水管や修繕履歴、管理組合の資料まで確認することが大切です。

不具合が起きた場合は、
写真や動画、業者の調査結果を残し、契約書で定められた期間内に売主へ連絡しましょう◎

売主側も、買主から連絡を受けたら放置せず、
早めに調査・対応することが、トラブルの拡大を防ぐポイントです。



”〈 不動産のノウハウ 〉”おすすめ記事

  • 「修繕積立金が安いマンションは大丈夫?長期修繕計画と大規模修繕を解説」の画像

    「修繕積立金が安いマンションは大丈夫?長期修繕計画と大規模修繕を解説」

    〈 不動産のノウハウ 〉

  • 家の維持費はいくら?戸建てとマンションの年間費用・修繕費を徹底比較の画像

    家の維持費はいくら?戸建てとマンションの年間費用・修繕費を徹底比較

    〈 不動産のノウハウ 〉

  • 不動産売却で値引き交渉されたらどうする?価格交渉の相場と対応方法の画像

    不動産売却で値引き交渉されたらどうする?価格交渉の相場と対応方法

    〈 不動産のノウハウ 〉

  • 定期借地権とはどんな制度?3つの種類と契約期間をわかりやすく解説の画像

    定期借地権とはどんな制度?3つの種類と契約期間をわかりやすく解説

    〈 不動産のノウハウ 〉

  • 貸主が修繕しない場合も家賃は必要?連帯保証人への未払い賃料請求が認められた裁判例の画像

    貸主が修繕しない場合も家賃は必要?連帯保証人への未払い賃料請求が認められた裁判例

    〈 不動産のノウハウ 〉

  • 角地とはどんな土地?メリット・デメリットをわかりやすく解説の画像

    角地とはどんな土地?メリット・デメリットをわかりやすく解説

    〈 不動産のノウハウ 〉

もっと見る