
売主が注意すべき契約条項とトラブル事例
売主が注意すべき契約条項とトラブル事例
ー「知らなかった」では済まされない不動産売却の落とし穴ー
不動産を売却する際、
多くの方がこう考えます。
「契約書は不動産会社が作るから大丈夫」
「買主側の注意点の方が多いのでは?」
しかし実務の現場では、
売主側の思い込みや確認不足が原因で
トラブルになるケースが
非常に多くあります。
不動産売買契約書は、
買主を守るためだけのもの
ではありません。
同時に、
売主の責任や義務を明確に定める書類
でもあります。
この記事では、
・売主が特に注意すべき契約条項
・実際によくあるトラブル事例
・トラブルを防ぐための考え方
を解説します。

売主が陥りやすい3つの誤解
まず、
売主がよく抱きがちな誤解を
整理しておきましょう。
⚪️ 誤解①「引き渡したら責任は終わり」
→ 間違いです。
契約内容によっては、
引き渡し後も売主の責任が残るケース
があります。
⚪️ 誤解②「知らなかったことは責任にならない」
→ これも危険です。
「知らなかった」こと自体が、
責任を免れる理由にならない場合
があります。
⚪️ 誤解③「不動産会社が全部チェックしてくれる」
→ 過信は禁物です。
最終的に契約当事者となるのは、
売主本人です。
注意すべき契約条項①契約不適合責任
中古住宅の売却で、
売主にとって最も大きなリスクになりやすいのが
契約不適合責任です。
これは簡単に言うと、
「引き渡した物件が「契約内容と違う状態」だった場合、
売主が責任を負う」
というルールです。
ポイントは
「欠陥があるかどうか」ではなく、
“契約と違っていたかどうか”
で判断される点です。
つまり、
売主が「悪気がない」「知らなかった」と言っても、
契約内容次第で責任が生じる可能性
があります。
契約不適合責任が問題になると、
買主は主に次の請求をしてきます。
⚪️ 追完請求(修理して)
例:給湯器交換、漏水修理、屋根・外壁補修
⚪️ 代金減額請求(値引きして)
例:修理費相当額の減額⚪️損害賠償請求(費用を払って)
例:応急処置代、調査費、仮住まい費用の一部など⚪️ 契約解除(重大ならやめたい)
※現実にはハードル高いですが、
ゼロではありません
売主側から見ると、
「修理費だけ」では終わらず、
交渉・時間・精神的負担も大きくなります。
◯ よくある不適合の例
・雨漏り
・シロアリ被害
・給排水管の故障
・建物の傾き
・地中埋設物(古い基礎、ガラなど)
特に注意が必要なのは、
引き渡し後に発覚するケースです。
⚪️「知らなかった」でも責任が出るの?
結論としては、
契約内容次第で知らなかった
でも責任が出ます。
ただし、
売主を守る手段はあります。
それが次の2つです。
・正しく告知する(知っていることは書く)
・契約で責任範囲を調整する(免責・期間・対象)
この2つが整っていると、
「想定外の請求」をかなり減らせます。
⚪️トラブル事例①
「住んでいて問題なかった雨漏り」
売主:「自分たちが住んでいる間は大丈夫だった」
買主:「大雨の日に雨漏りが発覚」
→ 結果:
契約書に免責がなく、
修理費用を売主が負担することに。
「今は大丈夫」=「問題がない」
とは限らない点に注意が必要です。
⚪️売主がやるべき「契約前チェック」5つ
・知っている不具合は全部書く(告知書)
・設備の動作確認(可能なら動画)
・床下点検口・天井点検口があるか確認
・雨漏り・シロアリ・配管の簡易点検を検討
(費用対効果が高い)
・免責範囲・期間を“数字と言葉”で明確にする
これだけで、
契約不適合責任の事故確率は
大幅に下がります。
注意すべき契約条項②契約不適合責任の免責・期間
多くの中古住宅では、
・契約不適合責任を一部免責
・責任期間を「引き渡しから◯ヶ月」に限定
するケースがあります。
ここで重要なのは、
・どこまで免責されているのか
・期間はいつまでか
を正確に理解しておくことです。
よくある勘違い
「免責と書いてあるから全部責任なし」
「期間が短いから安心」
実際には、
免責の対象外になっている項目も多く、
完全に責任がなくなるわけでは
ありません。
注意すべき契約条項③告知義務
売主には、
告知義務があります。
これは、
買主の判断に影響を与える事実は、
事前に伝えなければならない
という義務です。
告知漏れがあると、
買主から次のような主張が出ます。
⚪️損害賠償
(引越費用、ホテル代、調査費、リフォーム費の一部などを請求されることも)
⚪️代金減額
(「告知されていたらこの価格では買わなかった」)
⚪️契約解除
(重大で、居住が難しい・購入目的が達成できない場合など)
また、
金額だけでなく
時間(対応・交渉・弁護士相談)と
精神的負担がかなり大きいです。
◯告知が必要な例
・過去の事故・事件
・近隣トラブル
・騒音・振動問題
・境界トラブル
・建物の不具合履歴
⚪️ トラブル事例②
「言わなくてもいいと思っていた近隣トラブル」
売主:「もう解決しているから言わなかった」
買主:「入居後に同じトラブルが再発」
→ 結果:
「重要な告知義務違反」と判断され、
損害賠償請求に発展。
「解決済み」「昔の話」でも、
買主の判断に影響するなら
告知が必要です。
注意すべき契約条項④引き渡し条件・現状有姿
売買契約では、
「現状有姿(げんじょうゆうし)」
という言葉がよく使われます。
現状有姿とは、
契約時点の状態のまま引き渡す
(売主は原則として修理・改修を行わない)
という意味です。
重要なのは、
「現状有姿=売主の責任ゼロ」ではない
という点です。
現状有姿はあくまで
「引き渡し時の状態」を定めているだけで、
・契約不適合責任
・告知義務
を自動的に消す魔法の言葉では
ありません。
◯守られやすい部分
・経年劣化(古さ・使用感)
・軽微な傷・汚れ
・機能低下が予測できる消耗品
「築年数相応」「中古として当然」
と評価される部分。
⚠︎注意点
・撤去するもの/残すもの
・設備の動作確認
・不要物の処分範囲
これらを曖昧にすると、
引き渡し直前・直後に
揉めやすくなります。
⚪️トラブル事例③
「残すと思っていた設備が撤去されていた」
売主:「使わないから撤去した」
買主:「付いてくると思っていた」
→ 結果:
契約書の記載が曖昧で、
売主負担で復旧することに。
注意すべき契約条項⑤引き渡し遅延・違約金
売主側の事情で、
・引っ越しが間に合わない
・抵当権抹消が遅れる
・書類準備が遅れる
といったケースもあります。
契約書には、
・引き渡し期日
・遅れた場合の違約金
が明記されています。
⚪️ トラブル事例④
「数日遅れただけのつもりが…」
売主:「数日なら問題ないと思った」
買主:「引っ越し・ローン実行に影響」
→ 結果:
違約金や損害賠償請求が発生。
「少しぐらい」は通用しないのが契約です。

売主がトラブルを防ぐために大切な考え方
⚪️ 不利なことほど先に出す
隠すより、
先に説明して条件に落とす方が安全です。
⚪️「書いていないこと」は起きやすい
口頭説明ではなく、
契約書・付帯設備表に残すことが
重要です。
⚪️ 不安な点は「質問していい」
売主であっても、
契約内容を理解する義務があります。
【まとめ】
不動産売却では、
・高く売ること
・早く売ること
に目が行きがちですが、
一番大切なのは
「安全に終わらせること」です。
契約条項を正しく理解し、
・何に責任があるのか
・どこまで責任を負うのか
を把握しておくことで、
売却後のトラブルは大きく減らせます。
不動産売却は、
売ったあとこそ差が出る取引です。
「知らなかった」では済まされないからこそ、
契約書は“形式”ではなく
自分を守るための書類として
向き合いましょう。

