
不動産の遺産分割とは?4つの分け方と相続した家・土地の売却方法を解説
【 はじめに 】
相続が発生したとき、預貯金であれば金額を分けやすいですが、
家や土地、マンションなどの不動産は簡単に分けることができません。
例えば、親が住んでいた実家を兄弟で相続することになった場合でも、
「誰か1人がそのまま住むのか」
「売却して現金で分けるのか」
「家を相続する人が、ほかの相続人へ現金を渡すのか」
など、いくつもの選択肢があります。
しかも、不動産は金額が大きく、誰が取得するかによって相続人それぞれの受け取る財産額にも差が出やすいため、
遺産分割の中でも特に話し合いが難しくなりやすい財産です。
では、不動産を相続した場合、どのような方法で分ければよいのでしょうか。
今回は、不動産の遺産分割とは何か、遺産分割協議の進め方や
不動産を売却する場合の流れや注意点まで、一つずつ整理していきます。

1.「遺産分割」とは?
遺産分割とは、
亡くなった方が所有していた財産について、相続人の誰が何を取得するのかを決める手続きです。
亡くなった方を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」と呼びます。
例えば父親が亡くなり、
* 自宅
* 土地
* 預貯金
* 株式
* 自動車
などを残していた場合、それぞれを誰が取得するのか話し合って決めていきます。
相続が発生すると、遺産は原則として法定相続分の割合で相続人が共有する状態になります。
ただし、法定相続分どおりに実際の財産を分けなければならないわけではありません。
相続人全員が合意すれば、
「自宅は母親が相続する」
「預貯金は子ども2人で分ける」
など、具体的な事情に合わせて分割できます。
その話し合いが遺産分割協議です。
2.不動産の遺産分割が難しい理由
預貯金であれば、1,000万円を2人で500万円ずつ分けることができます。
ところが、
一戸建てやマンションを真ん中から半分に切って相続することは現実的ではありません。
ここが、不動産相続が揉めやすい理由の一つです。
さらに不動産には、
「その家に住みたい人」
「売却して現金が欲しい人」
「将来値上がりするかもしれないので残したい人」
など、相続人ごとに違う考えが出てきます。
加えて、不動産の価格も一つではありません。
固定資産税評価額、相続税評価額、実際に売却できる市場価格など、
目的によって評価の考え方が違います。
例えば長男が、
「この家は2,000万円くらいだから自分が相続する」と考えていても、
ほかの兄弟が、
「不動産会社に査定してもらったら3,000万円だった」となれば、
そこから話がまとまらなくなることもあります。
そのため、不動産を含む遺産分割では、まず不動産の価値をある程度把握することが非常に重要です‼︎
3.不動産の遺産分割には主に4つの方法がある
不動産を分ける方法には、主に4つの考え方があります。
それが、
現物分割・代償分割・換価分割・共有分割 です。
名前だけ見ると少し難しく感じますが、それぞれの仕組みを理解すると分かりやすくなります。
4.現物分割
もっとも分かりやすい方法が現物分割です。
例えば、
・父親の自宅 → 長男
・土地 → 次男
・預貯金 → 長女
というように、財産をそのまま相続人へ割り振ります。
不動産が複数ある場合は使いやすい方法ですが、
不動産が実家1件だけの場合には公平に分けることが難しくなります。
例えば3,000万円相当の実家を長男が取得し、他の兄弟がほとんど財産を受け取れないとなれば、
不公平感が生まれる可能性があります。
そのため、現物分割は財産の種類や金額にある程度バランスがある場合に向いている方法です。
5.代償分割
不動産相続でよく検討される方法が代償分割です。
代償分割とは、一部の相続人が不動産を取得し、
その代わりにほかの相続人へ現金などを支払う方法です。
例えば、
実家の評価:3,000万円
相続人:兄・弟の2人
だったとします。
兄が実家を相続する代わりに、弟へ1,500万円を支払うという方法です。
これなら実家を売却せず、兄が住み続けることができます。
ただし、兄に1,500万円を支払えるだけの預貯金や資金力が必要です。
不動産はあるけれど現金が少ない相続では、
代償金を準備できないこともあるため、資金計画まで考える必要があります。
6.換価分割
不動産を相続人同士で公平に分けやすい方法が換価分割です。
換価分割とは、相続した不動産を売却し、その売却代金を相続人で分配する方法です。
例えば、
相続した実家を3,000万円で売却
↓
売却費用などを差し引く
↓
残った金額を兄弟3人で分ける
という考え方です。
「誰も実家に住む予定がない」
「相続人全員が現金で受け取りたい」
「公平に分けたい」
というケースでは非常に分かりやすい方法です。
一方、売却価格が予定より低くなったり、売却に時間がかかったりする可能性があります。
そのため遺産分割協議をする前に、不動産会社へ査定を依頼し、
どれくらいで売却できそうか確認しておくと話し合いが進みやすくなります。
7.共有分割
もう一つが共有分割です。
例えば兄弟2人で、
兄:持分2分の1
弟:持分2分の1
という形で不動産を共有します。
一見すると公平ですし、
「とりあえず半分ずつにしておけばいいのでは?」と思ってしまいます。
しかし、共有不動産は将来的に問題が起こりやすいため注意が必要です。
例えば不動産全体を売却するときには共有者全員の協力が必要になります。
兄は売りたいけれど弟は売りたくない、という状況になると簡単には進みません。
さらに共有者の1人が亡くなると、その持分が次の相続人へ引き継がれ、
2人共有
↓
3人共有
↓
5人共有
というように、世代が進むほど権利関係が複雑になる可能性があります。
そのため、特に理由がなければ「とりあえず共有」という判断は慎重に考えたいところです。

8.どの分割方法がいい?
どの遺産分割方法が一番いいかは、家庭によって違います。
例えば、母親が引き続き実家に住むのであれば、
実家を母親が相続する現物分割や代償分割が考えられます。
一方、子どもたち全員がすでに別の家を持っていて、誰も実家を利用する予定がなければ、
換価分割によって売却する方が分かりやすいでしょう。
重要なのは、単純に、
「法律上何分の1だから、その割合にすればいい」だけで決めないことです。
今後その不動産を誰が使うのか、維持費を誰が負担するのか、
売却する予定があるのかまで考えて決めることが大切です。
9.遺産分割協議は相続人全員で行う
遺産分割協議で特に重要なのが、相続人全員が参加することです。
例えば相続人が、
・母
・長男
・次男
・長女
この場合、
4人全員で協議する必要があります。
そのため、まずは戸籍などを確認して、誰が相続人なのかを確定することが重要です。
長年連絡を取っていない相続人や、前婚の子どもなどが存在するケースもあります。
話し合いがまとまったら、通常は遺産分割協議書を作成します。
不動産については、
登記事項に基づいて対象不動産を特定して記載します。
相続登記や不動産売却の手続きにも関係する重要な書類ですので、
内容に不安がある場合は司法書士や弁護士などの専門家へ確認するのが安心です。
10.遺産分割に期限はある?
「遺産分割はいつまでにすればいいの?」という疑問も多いと思います。
遺産分割協議そのものについて
単純に「相続開始から○か月で終了しなければならない」という話ではありません。
しかし、実務上はできるだけ早く進めることが重要です。
特に注意したいのが相続税と相続登記です。
相続税の申告・納税期限は、
原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
遺産分割が終わっていなくても、この期限が延びるわけではありません。
つまり、
「兄弟で話がまとまっていないから相続税の申告もしなくていい」
とはならないので注意が必要です。
11.遺産分割が終わっていなくても相続税申告は必要
相続税が発生する場合、
遺産分割協議がまとまっていなくても期限までに申告する必要があります。
遺産が未分割の場合には、
各相続人が法定相続分などに従って財産を取得したものとして相続税を計算し、申告・納税します。
さらに未分割の状態では、当初申告の段階で、
・配偶者の税額軽減
・小規模宅地等の特例
などを利用できない場合があります。
ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付するなど一定の手続きを行い、
期限内に遺産分割が成立すれば、後から特例を適用できる場合があります。
相続税がかかりそうな場合は、遺産分割の段階から税理士へ相談しておく方が安心です。
12.相続税はいくらからかかる?
相続が発生したからといって、すべての家庭に相続税がかかるわけではありません。
相続税には基礎控除があり、現在の計算式は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数 です。
例えば法定相続人が3人の場合、
3,000万円+600万円×3人
=4,800万円
となります。
正味の遺産額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告・納税が必要になる可能性があります。
ただし、不動産の相続税評価は単純な売却価格とは異なります。
そのため、
「この家は3,000万円で売れそうだから、相続税評価も3,000万円」
とは限りません。
不動産売却の査定価格と相続税評価額は目的が違うことを覚えておきましょう。
13.2024年から相続登記が義務化されている
不動産を相続した場合に必ず知っておきたいのが相続登記の義務化です。
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した相続人は、
原則として不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に
相続登記を申請することが義務付けられています。
正当な理由なく義務を怠った場合は、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
さらに、2024年4月1日より前に発生した相続についても対象です。
義務化前から相続したことを知っていた未登記不動産については、
原則として2027年3月31日までの対応が必要です。
これは2026年現在、不動産を相続している方には特に重要なポイントです。
14.不動産の査定は遺産分割の前にしておいた方がいい?
私は、不動産が遺産に含まれている場合には、
遺産分割協議の前にある程度の市場価格を確認しておくことが大切です。
例えば兄が、
「実家を自分が相続するから、その代わり弟に500万円渡す」
と提案したとします。
しかし実家が実際には4,000万円程度で売れる物件だった場合、弟が後からその事実を知ると、
「そんなに価値があるとは聞いていなかった」
となる可能性があります。
だからこそ、
固定資産税評価額だけではなく、
実際に市場で売却するとしたらどの程度なのかを確認したうえで話し合うことが重要です。
特に代償分割や換価分割を検討する場合、
不動産査定は遺産分割の判断材料として非常に役立ちます。
15.不要な土地なら相続土地国庫帰属制度もある
相続した土地について、
「山林で利用予定がない」
「遠方なので管理できない」
「売ろうとしても買い手が見つからない」
というケースもあります。
そのような場合、
一定の条件を満たせば相続土地国庫帰属制度を利用できる可能性があります。
この制度は、相続などによって取得した土地について、
法務大臣の承認を受け、一定の負担金を納付することで国庫へ帰属させる仕組みです。
2023年4月27日から開始されています。
ただし、どの土地でも引き取ってもらえるわけではなく、
通常の管理や処分に過大な費用・労力が必要な土地などは対象外となる場合があります⚠︎
共有地の場合には、原則として共有者全員が共同で申請する必要があります。
そのため、「相続したくない土地は簡単に国へ返せる」という制度ではありません。

【 まとめ 】
不動産の遺産分割では、
・現物分割
・代償分割
・換価分割
・共有分割
という方法があり、
家族の状況や不動産の価値、今後の利用方法によって適した方法が変わります。
特に注意したいのは、
相続した不動産を「とりあえず共有」「とりあえず名義変更せず放置」としてしまうことです。
相続登記はすでに義務化されており、
相続によって不動産を取得したことを知った日から原則3年以内の申請が必要です。
過去の相続についても対象となります。
また、相続税の申告が必要な場合は、
遺産分割が終わっていなくても原則10か月以内という期限があります。
そのため、不動産相続では、
「誰が相続するか」だけでなく、
「その不動産をこの先どうするか」まで考えることが重要です‼︎
住み続けるなら現物分割や代償分割、誰も使わないなら換価分割による売却など、
将来の管理や処分まで見据えて決めることで、その後のトラブルを減らしやすくなります。
不動産が遺産に含まれている場合は、まず現在の市場価格を把握し、
その価格を一つの判断材料として家族で話し合ってみることから始めてみましょう。
※本記事は2026年8月時点の公的情報をもとにした一般的な解説です。実際の相続関係、遺産分割、登記、相続税などの判断については、弁護士・司法書士・税理士などの専門家へご確認ください。
